販売ができたから営業もできると思っていた|本当に欲しかった自由は営業車の中になかった

カーバッテリー営業で一人営業車に乗り、自分が求めていた自由との違いに悩む20代男性のイラスト 働いてわかったこと

前回の記事では、カー用品店で3年ほど働き、仕事を覚えたからこそ会社の仕組みに疑問を持つようになった話を書きました。

前回の話:客が来ないのに歩合制。カー用品店3年目で感じた会社の仕組みへの違和感

歩合制。みなし残業。客数が少なくても求められる売上。ポスティング。なかなか増えない給料。

仕事内容も人間関係も嫌いではありませんでした。

むしろ、自分が初めて「仕事って面白いかもしれない」と思えた職場だったと思います。

それでも、「このままずっとここで働くのは違うな」と思うようになりました。

もう少し給料を上げたい。ボーナスも欲しい。自分なら、もう少しできるんじゃないか。

そんな気持ちで転職しました。次に選んだのは営業職です。

しかも、まったく知らない商品ではありません。カーバッテリーの営業でした。

カー用品店時代、自分がかなり自信を持って販売していた商品です。

だから正直、少し舐めていました。

「バッテリーなら分かっている。営業でもやれるだろう」

本気でそう思っていました。

でも自分が分かっていたのは、バッテリーでした。営業ではありませんでした。

一番自信のあった商品だった

カー用品店では、いろいろな商品を扱いました。

その中でもバッテリーは、自分なりにかなり売ってきたつもりでした。

商品知識もある。お客さんへの説明もできる。交換時期についても話せる。

カー用品店で働く中で、何台分売ったのかは覚えていません。

ただ、「周りの人より売ってきた数は多い」くらいの自信はありました。

転職先も車用品関係。扱う商品もバッテリー。完全なゼロからではありません。

むしろ、「今まで覚えたことをそのまま使える」くらいに考えていました。

カー用品店に入った頃は何も知らなかった自分が、3年間でここまでできるようになった。

だったら次もできる。そう思うくらいの自信はついていました。

転職先は6人ほどの小さな会社だった

転職した会社は、6人くらいの小さな会社でした。

自分以外はかなり年上です。感覚としては、父親以上の年代の人たちばかり。社長もかなり年上でした。

前のカー用品店とは、まったく雰囲気が違いました。

カー用品店には同年代の友人がいた。アルバイトの子もいた。先輩たちもいた。

売場に行けば誰かがいる。分からなければ聞ける。忙しければ一緒に動く。

仕事が終われば飯を食べたり、酒を飲んだりする。

自分はそこで、誰かと一緒に働くことが当たり前になっていたんだと思います。

転職して初めて、それが当たり前ではなかったことに気づきました。

営業になったら、一人だった

営業の仕事は基本的に一人でした。

一人で車に乗る。一人で得意先を回る。バッテリーを降ろす。話をする。

また一人で車に乗る。次の得意先へ向かう。これを繰り返します。

前の職場なら、横を向けば誰かがいました。営業ではいません。

今振り返ると、自分にはこの環境がかなり合っていませんでした。

当時の自分は特に、人からどう見られるかをすごく気にしていました。

認められたい。頼られたい。評価されたい。

前のカー用品店では、それが自分を動かす力にもなっていました。

お客さんから反応が返ってくる。先輩から声をかけてもらう。仲間と一緒に仕事をする。

そういうものがありました。

営業には、それがほとんどありませんでした。

誰も見ていないと、自分を律することができなかった

これは格好悪い話ですが、今なら書けます。

営業になって一人で動くようになると、誰も見ていない場所で、自分を律することができませんでした。

最初の頃は一生懸命でした。

新しい仕事を覚える。得意先を覚える。道を覚える。バッテリーを運ぶ。

最初の頃は、新しいことを覚える感覚もあって、それなりに楽しかったと思います。

でも慣れてくると、要領だけは良くなります。

得意先を回るのも早くなる。仕事が予定より早く終わる。時間が余る。

誰も見ていない。

そうすると、自分のさじ加減で仕事を緩めるようになりました。

一生懸命仕事をしている感覚が、少しずつなくなっていったんです。

働いているのか。時間を潰しているだけなのか。自分でもよく分からない。

仕事とプライベートの境目も、だんだん曖昧になっていきました。

一番きつかったのは「誰にも届かない」ことだった

営業成績が悪かったことも、もちろんきつかったです。

でも今思い返すと、一番苦しかったのは別のところだった気がします。

自分の声が、誰にも届いていない。

そんな感覚でした。

会社へ戻る。周りは父親くらい年の離れた人たち。

自分が何か言っても、「若造が何言ってるんだ」くらいに思われているような気がする。

取引先へ行く。別に自分と話したいわけではない。バッテリーの話を聞きたいわけでもない。

会社でも空気。取引先でも空気。

自分が何をしても、誰からも反応が返ってこない。

20代の自分にとって、これはかなりきつかったです。

前の職場では、「自分もここにいていいんだ」と思える瞬間がありました。

この仕事では、それがほとんどありませんでした。

店では「何を探していますか?」から始められた

カー用品店での接客販売と、自分から取引先へ行く営業の違いを描いたイラスト

カー用品店では、お客さんが目的を持って来てくれます。

タイヤが欲しい。オイルを交換したい。バッテリーが気になる。

何かしら理由があって店に来ています。

だから、「何をお探しですか?」から始められます。

でも営業は違います。こちらから行きます。

相手からすれば、「なんで来たの?」です。

別に今日、バッテリーについて話したかったわけではない。買おうとも思っていない。

そこへ自分が行って、「このバッテリーどうですか?」と話す。

カー用品店と同じ感覚で売れるわけがありません。

でも当時の自分は、その違いをよく分かっていませんでした。

自分は雑談ができなかった

営業で一番苦手だったのは、たぶんこれです。

雑談ができませんでした。

年上ばかり。何を話したらいいのか分からない。

「最近どうですか?」

その次が出てこない。

いろいろな人から、「趣味の話でもすればいいんだよ」と言われました。

でも、それもうまくできませんでした。

自分は何かを好きになっても、そこまで深く突き詰められていないことが多かった。

ちょっと知っている。ちょっと好き。そのくらい。

だから趣味の話をしても、詳しく聞かれたらどうしよう。知らないことがバレたらどうしよう。

そんなことばかり気にしていました。

今なら、「それ知らないです。教えてください」でいいと思います。

でも当時は、それができなかった。

ボロを出したくなかったんです。

失敗したくないから、何もできなくなった

変なことを言いたくない。恥をかきたくない。知らないと思われたくない。失敗したくない。

だから無難に商品の話をする。

でも商品だけの話では関係はできない。関係ができないから売れない。売れないから焦る。

今なら分かります。

失敗を避けていたから、成功するために必要な経験まで避けていました。

雑談で滑ってもいい。話が続かなくてもいい。知らないことがバレてもいい。また次に行けばいい。

営業なんだから、そうやって経験を積むしかなかった。

でも20代の自分には、それが怖かったんだと思います。

自分は「無駄」が嫌いだった

もう一つ、自分の営業を難しくしていた原因があります。

自分は、無駄だと思うことが嫌いでした。

できるだけ早く結果へ行きたい。効率よくやりたい。意味のないことをしたくない。

だから営業先でも、雑談を飛ばす。世間話を飛ばす。何度も顔を出すことを面倒に思う。

そしてすぐ、「バッテリーどうですか?」に行く。

でも営業では、自分が無駄だと思っていた部分こそ必要でした。

最近どうですか。仕事忙しいですか。この前の話どうなりました。

そんな何でもない話。

何度も顔を出す。相手を知る。自分を知ってもらう。

その先に、ようやく商品がある。

自分はその順番を飛ばしていました。

カー用品店では遠回りできたのに

営業で無駄だと思っていた雑談や訪問が信頼につながっていたことを表すイラスト

これが今振り返ると不思議なんです。

カー用品店に入った頃の自分は、本当に何もできませんでした。

失敗する。先輩を呼ぶ。覚える。また接客する。また失敗する。

それを3年間続けて、ようやく仕事ができるようになりました。

かなり遠回りしています。

それなのに営業へ転職したら、遠回りすることを嫌いました。

すぐに売りたい。すぐ数字を出したい。すぐ認められたい。

前の職場で自分を成長させてくれたはずの、「積み重ねる時間」を自分から飛ばそうとしていました。

これが営業での大きな失敗だったと思います。

商品を知っているだけでは、営業にはならなかった

バッテリーについては自信がありました。

でも、「このメーカーの商品じゃなきゃ絶対ダメだ」と心から思っていたかと言われると、そこまではありませんでした。

当時、自分の会社が扱っていたバッテリーを売り込みに行くこともありました。

でも取引先には、すでに別のメーカーの商品や取引があります。

商品について説明できても、「なぜ今、自分からこれを買ってもらうのか」まで作れていませんでした。

商品知識があることと、相手から買ってもらえることは別でした。

前の職場で友人Aが、自分で商品を買って使って、「これはいい」と本気で思ったものを売っていた強さ。

今なら、あれが少し分かります。

自分自身が商品に惚れ込めていないのに、相手へ強く勧めるのは難しかったです。

大手ディーラーへの営業もきつかった

取引先には、大手の自動車ディーラーもありました。

こちらは業者側です。

自分が客として車を買いに行く時とは、当然立場が違います。

若い自分が営業で入っていく。相手は忙しそうにしている。年上の人も多い。

こちらから話をしなければならない。

雑談が苦手。失敗するのも怖い。

そんな自分に、新規開拓はかなりきつかったです。

何を話せばいいのか分からない。歓迎されている感じもしない。

行くこと自体がだんだん重くなっていきました。

気づけば、ただの配達員になっていた

入社してしばらくすると、一人で回るようになりました。

正確に何か月だったかは、もうはっきり覚えていません。

ただ、かなり早い段階で一人になった記憶があります。

営業について、じっくり教えてもらった感覚もあまりありませんでした。

気づけば自分がやっていたのは、バッテリーを積む。車で走る。得意先で降ろす。個数を記録する。また次へ行く。

それの繰り返しです。

自分の中では、「これ、営業なのかな」という感覚でした。

ただの配達員みたいになっている。

カー用品店では、売場を作った。アルバイトの子と話した。先輩と相談した。お客さんに商品を説明した。売れたらうれしかった。

いろいろなことがありました。

今度は一人で走って、バッテリーを降ろして、数を書いて、また走る。

すごく寒い仕事に感じました。

「何してるんだろう」が増えていった

新規開拓もうまくできない。売上も伸びない。会社でも相談できる人がいない。取引先とも関係を作れない。

でも仕事に慣れて、要領だけは良くなる。

時間が余る。仕事とプライベートの境目も曖昧になる。

頑張っている感じがない。成長している感じもない。何かを積み上げている感じもない。

少しずつ、「俺、何してるんだろう」という気持ちが強くなっていきました。

カー用品店では、昨日できなかったことが今日できる。それが楽しかった。

営業では、それを感じられませんでした。

給料が上がっても、うれしくなかった

転職して給料は前より上がりました。

月給は25万円台から27万円くらいだったと記憶しています。

入社時期がたまたま賞与の時期と重なり、少しだけボーナスもいただきました。

前の職場では、給料を上げたい。ボーナスが欲しい。と思っていました。

実際に少し条件が良くなった。だったらうれしいはずなんです。

でも、全然満たされませんでした。

何かを達成した結果でもない。自分が成長した感じもない。誰かに感謝された感じもない。

ただ給料が振り込まれる。

もらったボーナスも、結局よく分からないまま使ってしまいました。

ストレス発散のように使って、何も残らなかった。

この時、自分が仕事に求めているのは、お金だけではないんだと少しずつ分かってきました。

誰かに必要とされている感覚。昨日より成長している感覚。一緒に働く人とのつながり。

自分には、そういうものがかなり必要だったんだと思います。

自由になったはずなのに、全然自由じゃなかった

営業の仕事は、一見すると自由でした。

一人で車に乗る。自分で得意先を回る。上司が一日中横にいるわけではない。

仕事に慣れれば、自分のペースで回れる。誰かからずっと監視されているわけでもない。

前のカー用品店より、自由に見えました。

でも実際にそこで働いてみると、自分は全然自由だと感じませんでした。

誰にも見られない。誰にも相談できない。頑張っても反応がない。サボっても何も言われない。

仕事と自分の時間の境目も分からなくなる。

自由というより、孤立していたんだと思います。

自分が欲しかった自由は、一人で好き勝手に働くことではありませんでした。

本当に欲しかった自由は、そこにはなかった

40代になった今だから、少し分かります。

自分が欲しい自由は、誰とも関わらずに働くことではない。

仕事をちゃんとやる。誰かの役に立つ。仲間と助け合える。自分が少しずつ成長している。

そのうえで、家族との時間や自分の時間も持てる。

働く場所や働き方について、自分で選べる余地がある。

たぶん自分が欲しい自由は、そういうものなんだと思います。

20代の頃は、「人に管理されない=自由」くらいに考えていたのかもしれません。

でも、孤立と自由は同じではありませんでした。

一人でいられることと、自分らしく働けることも違いました。

カー用品店では窮屈だと思っていた部分もありました。

でも、なくなって初めて、人とのつながりが自分にとってどれだけ大きかったのかを知りました。

約3か月で、この仕事を辞めた

この仕事を辞める理由は、一つではありませんでした。

営業成績が伸びない。新規開拓が怖い。雑談ができない。相談できる人もいない。

会社でも取引先でも、自分の声が届いていない気がする。

そして仕事とプライベートの境目まで分からなくなっていく。

気づけば、「何のためにこれをやっているんだろう」と思うことが増えていました。

そして自分は、約3か月でこの会社を辞めました。

カー用品店では約3年続けたのに、次の会社は約3か月。

かなり短いです。でも、この3か月で知ったことがあります。

得意な商品を扱えば、得意な仕事になるわけではない。

そして、自分は一人で黙々と戦うより、誰かと一緒に働く方が頑張れる。

それまで自分では気づいていなかった部分でした。

「無駄」に見える時間は、本当に無駄なのか

この頃の自分は、とにかく早く結果が欲しかったです。

無駄を省きたい。近道したい。失敗したくない。

でも、営業で必要だったのは、自分が無駄だと思っていた時間でした。

何でもない話をする。何回も顔を出す。すぐ注文につながらなくても会いに行く。

失敗する。恥をかく。また行く。

そういう時間を飛ばした結果、結局一番遠回りしたのは自分でした。

これは今でも、自分に問いかけることがあります。

「今、無駄だと思っているものは、本当に無駄なのか?」

ブログだってすぐ結果は出ません。投資だってそうです。

人との関係も、今日作って明日完成するものではありません。

自分が嫌っていた遠回りの中に、本当は必要なものがあったのかもしれません。

あなたは、何があると仕事を頑張れますか?

20代の自分は、給料が上がればもっと満足できると思っていました。

でも実際には違いました。

給料が少し上がっても、人とのつながりがない。成長している実感もない。自分の仕事が誰かに届いている感じもしない。

それでは、自分は頑張れませんでした。

仕事を続ける理由は、人によって違うと思います。

給料かもしれない。自由な時間かもしれない。成長かもしれない。人間関係かもしれない。評価されることかもしれない。

一つだけじゃない人もいると思います。

自分の場合は、人とのつながりと、自分が少しずつ前へ進んでいる感覚。

これがないと、思っていた以上に弱かった。

もし今、「仕事そのものが嫌いなわけじゃないのに、なぜかしんどい」と感じているなら、仕事内容だけじゃなく、

「自分は何があると頑張れる人間なんだろう?」

と考えてみてもいいのかもしれません。

自分はそれに気づくまで、ずいぶん遠回りしました。

そして、自分が本当に目指していた自由は、あの営業車の中にはありませんでした。

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